東扇(あずまおおぎ)は江戸時代のブロマイド

中村仲蔵 舞踊・音曲世界から歌舞伎役者になる。売り出した当たり役は「忠臣蔵(五段目)」の斧定九郎である。それまでの定九郎は端役で、服装は大時代的な山賊の扮装で演じられていた。それを仲蔵は全身白塗りで服装は黒紋付、月代の伸びた髪に大小の朱鞘、素足に破れ傘、そして尻端折という格好に変へ大当たりを取った。此で看板役者となる。(明和3年(1766)9月9日の市村座で上演)


葛飾北斎 仮名手本忠臣蔵五段目 国立国会図書館デジタルコレクション所蔵
「忠臣蔵(五段目)の定九郎」歌川国芳 <東京国立博物館所蔵

「忠臣蔵(五段目)の定九郎」勝川春章 東京国立博物館所蔵

勝川春章の「東扇」は揃物として作られ、扇の形をした枠内に役者の半身像が役者似顔絵で描かれ、写真で分かるように折り目が付き、扇の地紙として使用できるようになっている。それだけでなく、衝立や障子の破けたところにワッペンのように張り付けぼろ隠しに使われた。贔屓の役者のワッペンである。
勝川春章を中心に東扇の本がある。『絵本舞台扇』勝川春章 一筆斎文調 版元 雁金屋伊兵衛 明和7年 下は「東扇」の五代目・市川團十郎である。

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