『柳南睨記 2巻(りゅなんげいき)』
谷村柳南 井口言忠寫 田中芳男(校)写本帖他
元絵は一幅を二丁に分け、柳南が序と一部を巻末に移したらしい。内容は木崎攸軒の『小児乃弄鯨一件の巻』と同じである。内容は、瀬美、長須などの鯨のほかにシャチ、イルカ、サメ、エイなどが描かれている。浜で働く様子がよく分かる、内容から紀州の捕鯨図と思われる。(参考・東京大学 鯨ー日本の古式捕鯨と図説ー)

紀州熊野の捕鯨家太地家に所蔵されていた本を写したものであろう。(享保20年(1735)に大原重株が写したとある)資料には捕鯨具三種と十一種の鯨の解説が載せられている。絵は他の図譜でも同様である。江戸期特有の何度も写しを繰り返す転写である。(参考・東京大学 鯨ー日本の古式捕鯨と図説ー)

『紀州熊野浦諸鯨の図』享保八年(1723)写本、田中芳男所蔵。一帖の中には三種類の資料がある。資料にはサメ、エイ、イルカ、マンボウなども描かれている。鯨以外にも含まれるのが江戸期図譜の特徴である。(参考・東京大学 鯨ー日本の古式捕鯨と図説ー)

井原西鶴の鯨

 鯨を扱った記述では異色のものである。井原西鶴『日本永代蔵』貞享五年(1688)には、天狗は家名の風車で紀の路大湊泰地の捕鯨の話を載せているおり、日本の工場製手工業とも言える捕鯨産業を正確に描いている。
『日本永代蔵』は井原西鶴の浮世双紙で、町民の成功や失敗談を取り上げたものである。捕鯨は巻二の「天狗は家名の風車」にある。全編に金銭にまつわる話を取り上げ倹約を勧めている。我が国最初の経済小説とも言える。
 物語は鯨取りの天狗源内は捕鯨で大金持ちになるが、信心深く恵比寿様に信心すると新しい漁のやり方を教わり巨万の富を築く成功話。

  (早稲田大学図書館所蔵)


幸田露伴(1867〜1947)の鯨

鯨の話は『勇魚捕(いさなとり)』明治44年(1911)6月 青木嵩山堂刊 2冊。
  主人公は伊豆の下田に生まれた彦右衛門、彼が玄界灘に面した生月島に行き、島の漁師と一緒に鯨取りをする半生を描く。幸田露伴が『勇魚取絵詞』を見てインスピレーションを得たと言われる。(参考・国文学研究資料館 本も同館所蔵)
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