●浮世絵師の中でも歌川国芳は戯画・狂画の第一人者であろう。彼が活躍した時は、天保の改革の出版規制が残り、幕府の顔色をうかがいながら板行していた。国芳には独創的なアイデアで乗り越えていた浮世絵師である。当時の風俗を巧みに取り入れた金魚の絵は擬人化され、何か各人で考えさせる絵である。
1.「金魚づくしー百ものがたり」の猫は、まさに怪談の猫を思わせる表情である。金魚の持っている黒丸の付いた棒はなんだろう。どうやら「金魚すくい」の網らしい。
2.「金魚づくしー玉や玉や」は水中の泡をシャボンに見立てている。百ものがたりの2番目の絵である。オタマジャクシが大きくなり蛙になる手前である。
3.「金魚づくしーさらいとんび」は難解な絵である。上の金魚らしき姿は、金魚が変身して狭い金魚鉢から自由なトンビになり去ってゆく姿か、下の丸い物体(油揚げ)や猿の置物がある看板は何を意味するのか、分からない。オタマジャクシは蛙になっている。順番がある三枚揃いの浮世絵であろう。金魚も年を取り子供までいる。改革も収まり自由が来るという暗示か。
●この金魚シリーズは8点あり、他のタイトルは「にはかあめんぼう」「まとい」「酒のざしき」「いかだのり」「そさのおのみこと」である。
全て複刻され「浮世絵のアダチ版画店」で販売されている。外人への贈り物には最適である。
2012年1月のこと国芳の金魚に新しい絵「金魚づくしーぼんぼん」が見つかった。これで9枚だが版木に2枚の版木を彫るので、未知の「金魚づくし」がもう一枚ある可能性がある。「猫も化も物も歌川国芳の江戸っ子仲間」
●2012年1月のこと国芳の金魚に新しい絵「金魚づくしーぼんぼん」が見つかった。これで9枚だが版木に2枚の版木を彫るので、未知の「金魚づくし」がもう一枚ある可能性がある。
●「金魚づくしーさらいとんび」絵・一勇斉国芳(歌川国芳) 版元・村田 村田屋治郎兵衛または村田屋市五郎か不明、天保年間末頃(1830ー1844)東京国立博物館蔵 拡大表示
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