歌川国貞が描く「月の陰忍逢夜」(つきのかげしのびあうよる)
シリーズ 江戸の奇想

「月の夜忍逢ふ夜ー灯篭」
絵・香蝶楼国貞 (三代豊国)極印・年代不明 版元・今井屋宗兵衛(地元草紙問屋)、恋人の文を灯篭の光で読む娘。 国立国会図書館デジタル化資料



「月の夜忍逢ふ夜ー忍び会う」絵・香蝶楼 国貞(三代豊国)極印・年代不明 版元・今井屋宗兵衛(地元草紙問屋) 、恋人に会いに行くのではないか、玄関で外をうかがう女。国立国会図書館デジタル化資料

「月の夜忍逢ふ夜ー月の光」絵・香蝶楼国貞(三代豊国)極印・年代不明 版元・泉市 和泉屋市兵衛 芝神明町の代表的な地本問屋。国立国会図書館デジタル化資料


「月の夜忍逢ふ夜ー隠す」絵・香蝶楼国貞(三代豊国)極印・年代不明 版元・今井屋宗兵衛(地元草紙問屋)、間男の着物か、見えないように隠す女。国立国会図書館デジタル化資料

「月の夜忍逢ふ夜ー納戸で探す」絵・香蝶楼国貞(三代豊国)極印・年代不明 版元・泉市 和泉屋市兵衛 芝神明町の代表的な地本問屋。国立国会図書館デジタル化資料

「月の夜忍逢ふ夜ー行灯を消す」絵・香蝶楼国貞(三代豊国)極印・年代不明 版元・泉市 和泉屋市兵衛 芝神明町の代表的な地本問屋。国立国会図書館デジタル化資料


月の明かりに驚く女……
 
絵(浮世絵)には珍しく、人やたばこ盆の影を描いている。基本的な描き方として絵には影を付けない。浮世絵に限らず、油絵でも人の影は付けない、影を付けると現実の人間になるため、神話や宗教画の神には影を付けない。
  本物の人間になるために、自分の影を探し求める男の物語があった。確か、ユング心理学者で、日本人の深層心理に深い造詣を示された河合隼雄氏の著作『影の現象学』で教示された記憶がある。30年前の読書で記憶も定かではないが、講談社学術文庫にあるので再読してみよう。

このシリーズは、2種類あるようだ、版元が今井屋宗兵衛と泉市(和泉屋市兵衛)である。特に泉市(4枚)は画中に泉市の文字を入れ、「月の光」以外は人工の光「行灯」である、光が当たったところが明るく、奇想描写である。「月の光」の絵のみが異質である。 2014.03.03

『夜の帳が降り、景色が闇に包まれるなかに、提灯からもれる明るい光に照らされて女性の上半身が浮かびあがります。……中略……今まさに提灯の火種を消そうとして、付けていた簪をはずしたところ、という情況が想像されます。……中略……彼女が忍んで逢いに行った男性はどんな人であったのでしょうか。ひととき前の逢引の余韻とともに提灯の火種を消す、という隠喩も感じられる。』
 背景には海の浪、手に持っているのは髪にさしていた簪であろう
(『美術館へ行こう 浮世絵に遊ぶ』安村敏信著 新潮社 1997年刊)


「月の夜忍逢ふ夜ー提灯」絵・香蝶楼国貞(三代豊国)極印・年代不明 版元・泉市 和泉屋市兵衛 芝神明町の代表的な地本問屋。国立国会図書館デジタル化資料 拡大表示

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