「月下砧打ち美人図」(げっかきぬたうちびじんず)東京国立博物館所蔵

「月下砧打ち美人図」応為栄女筆 印章「應」(白文方印) 紙本 
着色 一幅 113.4×31.3p 東京国立博物館蔵

日本大百科全書(ニッポニカ)「砧(織物)」の解説
砧(織物)(きぬた) 『きぬいた(衣板)の略で、織物を織り上げたのち織機から下ろしたままでは、堅くてなじまないので、織り目をつぶして柔らかくし、つやを出すために使われる道具。これを使ってする作業を砧打ち、または砧仕上げともいう。一般に石や木の台の上に折り畳んだ布を置き、木槌(きづち)を使って何回もたたく。これは麻・木綿に使われ、古くは弥生(やよい)時代の遺跡からこの目的に使用されたと思われる木槌が出土している。また絹では円棒に織物を巻いたのち、両端を軸受に支えて、回転させながら木槌で打ってつやを出す。』

画の砧打ちは、絹織物の作業であると思われる。応為の制作らしく、手や指先の表現、髪のほつれ毛など見られる。

制作年代……『本図の制作年代は難しいが、八十八歳の北斉落款作品「亀図」に同じ「應」印が捺されている点からすれば、弘化年間(1844〜49)が妥当に見える。(注・久保田一洋氏)



この絵は、「月下砧打美人図」葛飾応為の一幅として知られており、所有者は菅原鉄之助氏である。かれの肉筆浮世絵コレクションは優品が多いことで知られ、昭和三十年代、一括して東京国立博物館の買い上げとなり所蔵された。(注・久保田一洋氏)「月下砧打ち美人図」とタイトルが変わったのは、東博に所蔵されてからである。それまでは「月下砧打美人図」であり、変える理由はない。個人的な見解だが、ネットへアップする際コンピューターの単純な「送り仮名」ミスではないだろうか。