江戸の絵草紙屋の店先風景、『今様見立士農工商』から

浮世絵3枚揃い
三代歌川豊国『今様見立士農工商』安政4年(1857)版元・魚屋栄吉 国立国会図書館デジタル化資料


有力な地本問屋の魚屋栄吉である。 版元自らが自分の店を描いた宣伝である。もちろん江戸の絵草紙屋すべてが、こんな立派な店先ではない。しかし基本的に同じような展示方法をとっていた。まず一番人気の役者絵が店の目立つところに、次に美人画がくる。店によっては役者絵を店頭の一番目立つ店頭に吊した、これが吊し売りであり、現在のポスターと同じアイキャッチである。役者絵は歌舞伎の興行と密接な繋がりがある。興業の前宣伝で集客に活用され、また興業中は記念のお土産である、当然のこと興業が終われば売れ行きが落ちてしまう。役者絵の中でも人気歌舞伎役者の姿が必要である、天保の改革により、当代一番人気の市川海老蔵が上方に追放されたことは、絵草紙屋にとって如何に大きなダメージであったか示している。
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  天保の改革が頓挫した後に絵草屋は、「シタ賣」という販売方法で役者絵を復活させた。幕府と絵草紙屋の規制を巡るイタチごっこであった。シタ賣が許されるなら、見えないことを逆手に取った豪華な浮世絵も現れた。シタ賣には様々な説がある。

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