『奇鳥生写図』河野通明ほか写本・一軸 文化14年(1817)

国立国会図書館の資料によると『奇鳥生写図』は、江戸幕府御用絵師・浜町狩野家(狩野四家の宗家)に保存されていた絵を、河野通明他数名の絵師が模写したものである。江戸時代の図譜に描かれた絵は、狩野家の絵師が数多く関与していたらしい。

肥後藩藩主・細川重賢(1720〜1785)は『游禽図』(ゆうきんず)で、鴨などの水鳥27種を軸に描かせた。熊本大学付属図書館に委託・保管された軸は、今村随学模写とされている。この軸は、松平頼恭候(讃州候)の「頼恭図譜」を忠実に模写したものと考えられる。
また、「飛走図」には宝暦2年(1752)の日付と狩野純信(詳細不明)生写とある、ほかにも木挽町狩野家六代目・狩野栄川典信(1730〜1790)と浜町狩野家三代目狩野常川幸信(じょうせんゆきのぶ)(1717〜1770)の名前も見いだされる。
 では、今村随学とは誰なのか、 『古画備考』によれば、浜町狩野家二代目狩野随川甫信(ずいせんよしのぶ)(1696〜1745)の門人であり、明和4年(1767)に尾張藩御用絵師になっている。
『江戸の花鳥画ー博物学をめぐる文化とその表象』今橋 理子著

『奇鳥生写図』の絵師・河野利明の詳細は不明である。この本には54図が載せられており、優れた図が多いと言われる。この一軸には安永9年(1780)から文化14年(1817)の年代の記載があり、色々な軸から選んで模写したようだ。

木版画 トツケシャク

「トツケツシャク(突厥雀) サケイ(沙鶏)」ハト目サケイ科、ユーラシア大陸中央部砂漠地帯に生息し、まれに迷鳥として見つかる。多の図譜にも記載がある。全長23から24センチである。国立国会図書館デジタル化資料 

ヤツカシラ 木版画
右の鳥は「八つ頭」安永7年(1778)河野通明生写、和名・ヤツガシラ 八頭 ブッポウソウ目ヤツガシラ科、全長・28センチ。日本では旅鳥として知られる。イスラエルの国鳥。
左の鳥は「アシサシ(鰺刺)」チドリ目カモメ科、全長・35センチ、春と秋に渡り鳥と全国で見られる。絵には「子アシサシ」安永9年(1780)とある。国立国会図書館デジタル化資料 

木版画 エホリ木版画 シャコ

エホリ(鳥名不明) 国立国会図書館デジタル化資料

画中の記載によれば、「天明元年(1781)9月に薩摩候より絵を借り、水戸(水府)藩の絵師・池田宋眠が写した」とある。鳥はシャコである。
国立国会図書館デジタル化資料 


「信天翁(アホウトリ 阿呆鳥 阿房鳥)」ミズナギドリ目アホウドリ科、北太平洋に分布する、繁殖には鳥島などで行う。全長・84センチから100センチ、翼開帳は200センチを越す大型の鳥である。絵は「常川老筆」とある。
  明治時代になり明治政府は、外貨獲得のためあらゆる手段を取った、アホウドリの羽毛は高級で取引されたため、アホウドリを求め尖閣諸島、南鳥島、大東島諸島など無人島探検を行い大量に捕獲した。一時は絶滅したと考えられる情況であった。 江戸時代には数百万羽が生息していたとされる。国立国会図書館デジタル化資料 
国立国会図書館デジタル化資料

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