《17世紀のモーリシャス島を知る貴重な旅行記》

「17・18世紀大旅行記叢書」第二期全11巻のうち2巻目。
訳者 中地義和・小井戸光彦2002年10月29日 発行
発行者 大塚信一 岩波書店定価 9400円

『フランソワ・ルガとその一行による
        東インドのふたつの無人島への旅と冒険』

教授
帆船 モーリス島、バタヴィア、セント・ヘレナ島> および航海途上の他の場所で観察された瞠目すべき事物の報告を収録。 アムステルダム ジャン=ルイ・ド・ロルム書店 1708年


フランソワ・ルガの一行は1691年4月25日にディエゴ・ルイス島を発見する、島への上陸は4月30日であった。この島はディエゴ・ロドリゴまたはディエゴ・ルイス、別にロドリーグと呼ばれていたが、いま呼ばれている『ロドリゲス島』の事である。かれらはこの島で奇妙な鳥をみつけた。

孤独鳥(ソリテール)
『島に生息するすべての鳥のうち、最も注目に値するのは、孤独鳥(ソリテール)と名付けられた鳥である。多数いるにもかかわらず、群れで見かけることはめったにないために、この名前が付けられた。
 雄の羽根は通常、灰色がかった色と褐色が混じる。足もくちばしも七面鳥に似ているが、くちばしは七面鳥のそれよりも少し鈎状に反っている。尾はほとんどなく、羽根に覆われた尻は馬の尻のように丸まっている。七面鳥よりも背丈が高い。首はまっすぐで、背丈に比例して、七面鳥が頭を上げたときよりも少し長い。目は黒く生き生きとして頭には鶏冠(とさか)も冠毛もない。飛ぶことはまったくない、体の重みを支えるには、翼が小さすぎるのだ。翼はもっぱら、喧嘩をするときに使うか、あるいは互いに呼び合いたいときにくるくる回すくらいである。四、五分の間に同じ向きにすばやく二、三十回転する。そのとき翼の運動が、がらがらにきわめて近い乾いた音を出す。離れた地点からの聞こえる。翼の先端部の骨は太くなっており、羽毛の下でマスケット銃の弾のような小さな塊を形成している。これとくちばしが、この鳥にとって主な防御手段になる。』
(同書より)

『三月から九月にかけては、この鳥は常になく肥えて、味がすこぶる良い。若い鳥ならとくにそうだ。雄のなかには目方が四十五リーヴルもあるものもある。』(同書より)

『 雌はすばらしく美しい。ブロンドや褐色のものもある。ブロンドというのは金髪色という意味である。なめし革色のくちばしの上部に、寡婦が付けるヘアーバンドのような一種の帯がある。羽を整え、くちばしで磨くことに余念がないので、全身の羽があきれいにそろっている。腿の部分の羽は先端が貝殻状に丸まっている。その部位の羽はじつに密生していて、見た目に心地よい。噌嚢のうえに隆起部が二つあり、その部分の羽は一際白く、雌の美しい胸を見事に表している』

『歩き方はたいへんな気品と優美さがひとつに合わさり、見る者は感嘆の念を抱き、愛でずにはいられない。その結果、この鳥たちが美しい風貌ゆえに命拾いすることがよくある。』(同書より)

『砂嚢にはつねに鶏の卵ほどの褐色の石が入っている(雄の場合も同じである)この石は少々ごつごつして、一方の面は平たく他方は丸まっており、たいそう重くてたいそう硬い。われわれが判断したところでは、この石は鳥が生まれたときからもっているもので、どれほど幼い鳥にも備わり、しかもたったひとつしかない。それに噌嚢から砂嚢に通じる管は半分ほどの太さしか無く、これほど大きな塊を通す事は出来ない。ナイフを磨くには、この石が他のどんな石よりも重宝した。』(同書より)

『モーリス島への出発 』  (注、モーリス島とはモーリシャス島である)

  ついに出発の時が来た。風をも波をも従わせる崇敬すべき万能の神に加護を祈ったあと、1693年5月21日、最初は、風がないうえに、設置したブイに従って進路を取る必要もあって櫂で船を進めた。』(同書より)

『五月二十九日、航海9日目の夕方五時ごろ、ついにモーリス島の小さな湾にたどり着いた。満ち潮を見計らってかなり美しい川の流れのなかには入り、大木に覆われた小丘のふもとの心地よい場所に上陸した。船旅のせいでひどく頭がくらくらし、脚が酔っぱらいのようにふらつき、取り憑いた眩惑に抗しきれずに倒れてしまうのだった。』(同書より)

『とうとうノワール川についたが、そこにはオランダ人の数家族が住む三、四軒の小屋があり、われわれを歓迎してくれた。その人たちは温暖で快適な谷あいに、必要なだけの土地を開墾したり見つけ出していた。彼らの庭には、ヨーロッパおよびインド一帯で生育する大部分の植物がうえられており、タバコもたくさん栽培されていた。』(同書より)

以下後ほど