●スキヤポデス(1番のイラスト下から2番目) インドに棲むといわれている一本脚の人間。足は早く、眠るときは太いその足を頭にかざして日除け傘代わりにをするという。 ●犬の頭をした人間キュケファロス(1番のイラスト一番上) オリエントの伝説では、あの幼児キリ ストを背負って川を渡ったという渡守の聖クリストファロスも、犬の頭をしたこの種族だったという。マルコポーロの「東方見聞録」に記載あり、現在のアンダマン・ニコバル諸島付近に住む原住民のこと。 ●無頭人のブレミエス(1番のイラスト上から3番目) 胸に顔がある。これら不思議な奇形人間の話は、紀元前4世 紀後半ギリシャ人クテシアスが17年間捕らえられていたペルシャで、見聞きしたものを書いたものである。 それから100年後ギリシャ人メガステネスがインドの地誌を書いた。これ以外にも、ケンタウロス、キマイライなど古代ギリシャの怪獣も加わり、中世ヨーロッパ社会にまで伝わっていくのである。 〈中世キリスト教会はこれら人間以外の奇形をどうあつかったのか〉 『アウグスチヌスは、出生の奇形も東方の伝説的な奇形も共に神がその力を見せつけ、人間のその力にたいする驚異の念をめざますために創っただとした』 13世紀の百科全書を書いたヴァンサン・ド・ボーヴェも『奇形は神の失敗作ではなく、神が人間へのメッセージとしてことさら創ったものだという』と解釈した。 『歴史としての身体-ヨーロッパ中世の深層を読む-』 池上俊一著 柏書房刊 ●これらはキリスト教に教化すべき動物達である。そのため教会などの柱や壁の装飾(ヴェズレーのロマネスク教会)にも使われて教徒に見せたのである。日本では、中国から渡来した不思議な動物は、神を守る霊獣として扱われた、教化すべきヨーロッパと霊獣とではまったく違う。伝統的に力を信じるヨーロッパは、大航海時代に入ると原住民との話し合いによる解決ではなく、武力により征服する道を選んだのである。
〈奇形の話はプリニウスにも受け継がれ『博物誌』に集大成された〉 『プリニウス』を紹介している澁澤達彦氏の『 私のプリニウス』によれば、 なかでもとびきり変わっているのは無頭人プレミエスと『足がぐにゃぐにゃで蛇のように這ういうヒマントポデス族であろう』『プレミエス族はヌビア砂漠地帯に棲む実在の民族で、しばしば辺境を侵したのでロ ーマの歴史にも出てくるが、それがどうして無頭人とむすびついたのか。不思議である』と書いている。 氏は教会の狭い解釈ではなく、中世の人々は、もっとおおらかに不思議なものを楽しんだという。のちの画家ボスやブリュゲルの画にも、人が持つ自由な創造力があるように感じられるとある。