ーギリシャに生まれたドラゴンから、多種多様の怪物が生まれたー
キマイラ
 ホメロスの『イリアス』第六書に登場する怪獣である。イラストのように前は獅子(ライオン)、真ん中は山羊、後ろは大蛇である。口から炎を出し、神話では半人半神の英雄ペルレロフォンに退治される。このような不思議な姿は古代からの出土品により証明されている。イタリア・フィレンツエ・アレッオで青銅彫刻が見つかった。英雄ペルレロフォンに槍を口に差し込まれ退治される姿は、多くの絵画の題材になり描かれている。キマイラの意味は「不可能」を表すようになった。
この怪獣を退治する構図は、英雄(又は聖人)がドラゴンの口に槍を刺す『聖ゲオルギウスと竜』の画につながるのではないかと思われる。


サラマンドラ(Salamander)
  プリニウスが『博物誌』10巻で取り上げている、「火の中に住む小さな竜」である。「低い体温で火を消すことが出来る」という不思議な動物。マルコポーロは動物ではなく、今に言う「石綿」らしき物であるとした。また、プレスター・ジョンの手紙の中でも触れられ、『我が王国にはサラマンドラがいる』と述べている

中世ではサラマンドラは善なる火は燃やし続け、悪の火は消すと考えられた。(イメージ・シンボル事典)錬金術師にとってサラマンドラは火の聖(元素)であり、かのレオナルド・ダ・ヴィンチでさえ「サラマンドラが火を喰らい、それによって皮を再生する」と述べている。(『幻獣事典』ホルヘ・ルイス・ボルヘス/マルガリータ・ゲレロ著 柳瀬尚紀訳 晶文社1998年)

サラマンドライラスト紋章に使われた竜(イラスト)
ローマでは紫色の竜が軍旗となった。イギリスではアーサー王の父が印しとして用いた。十字軍以来にもつかわれ、軍人精神を表した。』(イメージ・シンボル事典 大修館1984年)

火の中に住むサラマンドラ
 
おそらくバシリスクは、サラマンドラに変化をとげ空を飛び口から火を吹く怪獣へとなった。2006年にイギリス製のSF映画「サラマンドラ」を見たが、まさしく人類を強力な火力で焼き尽くし、滅亡寸前まで追いつめる怪獣として描かれていた。左のイラストは映画で見た姿そのものである。
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