《バジリスク(Basilisk)とは、ギリシャ語で小さな王である》
バジリスクイラスト イラスト
イラスト
左のイラストはバシリスクの変化を時間的にあらわしたものである。上は初期のギリシャ時代、真ん中は「プリニウス」のいう王冠を載せたバシリスク。下は中世の羽を持ち竜(りゅう)に変化していくバシリスクである。

バジリスク(Basilisk)
 ルーツはギリシャらしい、語源は蛇である。古いギリシャの物語に出てくる空想上の動物である。伝承は色々と変化して形も変わった。名前の由来はギリシャ語で「小さな王」である。姿は頭に王冠を頂くか、に似た白い印をもつ。全体の姿は蛇であったり、竜のようである、全長は1フィートから6フィートである。

エジプトの伝説によれば、イビスという朱鷺(トキ)に似た鳥は、蛇をよく食べるという 。その食べた鳥の体内で卵が育ちバシリスクが生まれるという。また別の説によればヒキガエルが、温めた雄ニワトリの卵から生まれるのだという。(上記のイラストで、上のものは中世の王冠をかぶったバジリスク)(イラスト・右の彫刻はゴシック建築の教会壁面を飾るバジリスク)

バシリスクに見られるとヒトや動物は死んでしまうという。そのために、ガラス(鏡)の後ろに隠れて見なければならない。アレキサンダー大王の物語によれば、インドでこの蛇に出会ったらしく兵士に大鏡を持たせて退治したという。バシリスクの変わらないところは、『目差しと毒とによる致死作用である』とも言われる。

アイコン 『プリニウスの博物誌』によれば、『キュレナイカ地方に棲む蛇で、長さはせいぜい指の幅十二本ていどである。触れるだけで、いや、それどころか息がかかっただけで、灌木と言う灌木は死に絶え、草は燃え上がり、岩石は砕け散る。何でも破壊してしまうこの怪物を殺すのはコエゾイタチを使うしかない』と書いている。
中世になるとバシリスクも変わる。 小さな蛇が大きくなり脚や翼や、尾がついたり、頭には王冠を付けたものも出始めた。これは蛇の中の王としたためである。コブラのように体の半分を直立させて進むと言う。


《ギリシャのドラゴンから竜(龍)が生まれた》

ドラゴン(Dragon)

ギリシャ語のDRAKENにあると言われる。もともと蛇(ヘビ)であり、初期のバシリスクが蛇の形をもつのはこのためである。ギリシャ神話の中でも変化して、トカゲの姿に蛇を合体した竜が創られた。古い神話では混沌のシンボルであるが、キリスト教では悪魔となり滅ぼす対象となった。この他にも古代文明により色々な解釈がある。

日本における竜(ドラゴン)が水に関連する霊獣だったのに対して、西洋(ヨーロッパ)のドラゴンはハッキリとした人の敵であった。人間を滅ぼす怪獣でありキリスト教でも滅ぼす怪獣であると言っている。

『東洋の竜が多分に肯定的なイメージを含んでいるのと異なり、否定的なイメージが圧倒的に勝っている西洋の竜の物語の中で、より広く展開されたからである。英雄と竜との闘争は善と悪の、光と闇の闘争を象徴しており、それは二元論的な関係をあらわに示すものである』(「絵画のなかの動物たち」利倉隆著 美術出版社 2003年)

ギリシャ神話から始まる英雄と竜との闘争は、時代を経てキリスト教の中で人間の敵になり、滅ぼすか教化すべき対象になった。これが中世の教会の壁面に怪獣や不思議な動物がある理由である。右の写真は大田区の神社「久原西部八幡」である。明治の頃の再建だが江戸時代から続く雰囲気を伝えている。拝殿壁面には霊獣「立ち登る竜」の彫刻がある。日光の東照宮が霊獣の宝庫と言えようが、このような小さな神社にも見事な彫刻がある。


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