●現在の日本では、欧米化した食生活によりスパイスなどは一般的になった。そのため私たちは、中世のヨーロッパ人が狂気とも思える執着心で、香料(香辛料)を求めた理由を完全には理解できない。
● 香辛料はおもに次の3種類にわけられる、焚香料、調味料、化粧料である。
●焚香料とは……
「香をたく」と言うように匂いを楽しんだり、宗教で使用されるように 日本人にも馴染みのあるものである。化粧料とは、香水のことで主に体臭を消すことに使用された。しかし、調味料(香辛料)は日本人が抱くイメージとまったく違うものである。
●香辛料(調味料)とは何か、その役割……
中世から近世のはじめにかけて、中部ヨーロッパ、今のドイツ、オランダ、フランス、イギリスなどの地方の食生活は、気候からの制約が多かった。
ヨーロッパの国々は日本から見ればきわめて高緯度にある、ロンドンは北緯52度である。この位置は日本ではサハリンにあたる。フランスのパリでさえ北海道の北にあたる。いかに厳しい冬だか理解できるであろう
野菜や穀物の他には塩漬け肉、野鳥類、塩乾魚である。生活も牧畜など、牛や羊を主体としていた。 そのため長い冬の家畜の飼料が問題となっていた。その頃、サイロで干し草を保存することはおこなわれておられず、冬の間にこれらの飼料は外に積まれたままであった。
当然、腐るために多くの動物を飼うことは出来ずに冬になると、大部分の家畜を殺す事になったのである。
そして殺した家畜の皮や毛は、防寒具などで使用された。すべての動物の肉を塩漬けにして保存したが、日がたつにつれて腐るため、腐敗臭がするし、味も変になる。しかし春までは、その肉を食べねばならなかったのである。
そのため、強力な防腐剤やにおい消しが必要であった、それが香辛料である。また香辛料は天然痘やコレラ、チフスなどの死病に効くと信じられていた。臭いがそれらの病気を運ぶものだと考えられており、香辛料がその臭いを消すと信じられていた。他に胃や腸、肝臓の薬としても使われた。
香辛料とは、当時では「万能の薬」として、なによりも生活に必要な大事なものであった。支配者は領民に香辛料を与えることで、自分の権威が高まり富も集まる。
それが国内を安定化する大事な要素のひとつであった。
●肉類は塩漬けにされ、食べるときには胡椒がかけられた。口の中がカッとあつくなるあの感覚は一種の中毒症状を呼び起こした。人々は胡椒なしではいられなくなったのである。
「世界の歴史12 ルネサンス」会田雄次・中村賢二郎著 河出書房新社
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