●月岡芳年は残酷な描写による『英名二十八衆句』(落合芳幾との競作)の無残絵で知られているが、美人画や風景画でも才能を発揮した。構想力に優れ、『月百姿』『大日本史略図会』『風俗三十二相』などのシリーズ物がすばらしい、浮世絵師であっても肉筆画が描けない者が多い中で、彼はそれが出来る数少ない一人であった。御上洛東海道に参加したのは若い時であるのに、参加した16名の中でも描かれた8枚は優れた構成力を持ち、後の活躍を予感させる浮世絵になっている。また、彼の描いた東海道浮世絵(御上洛東海道)は実際の東海道五十三次にない風景がほとんどで、絵には源頼朝の家紋である笹竜胆が描かれており、出版統制を恐れたため、源頼朝に仮託して将軍の権威を高めるべく描かれている。2012.12.27更新
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06.東海道金杉橋芝浦 「金杉橋」(画題)文久三年五月 正文堂(版元) 27.東海道名所之内由比ヶ浜「由比ヶ浜」文久三年五月 正文堂 53.東海道名所之内高師ノ浦 「塩浜」文久三年五月 正文堂 78.東海道舞坂 「舞坂」文久三年四月 角本屋金次郎 117.東海道石部 「石部」文久三年四月 角本屋金次郎 124.東海道大津三井寺 「三井寺」文久三年五月 角本屋金次郎 150.東海道京都之内大内能上覧図 「※禁中」文久三年五月 正文堂 162.東海道名所之内千代田社 文久三年七月 正文堂 (注・浮世絵無し)
以上8点はタイトル『東海道中を描く錦絵の新展開ー「御上洛東海道」を中心にー』文学研究科博士過程後期課程 山本 野理子氏の論文中のリストによる。この中で国立国会図書館デジタル化資料で収蔵されている浮世絵7点(赤字)を紹介する。拡大表示は下の題名をクリック。月岡芳年の他の浮世絵を見る。
●家紋 笹竜胆(ささりんどう)、源頼朝の代表的な家紋である。78.舞坂の和船にも描かれている。