『啓蒙禽譜』3巻写本 幻の朱鷺 国立国会図書館の写本
 
国会図書館に所蔵されるこの本が注目される理由は、日本では絶滅した朱鷺(トキ)が描かれており、特に左ページの朱鷺は「背黒トキ」と命名されているためだ。右の桃花鳥と描いてあるのも、我々が良く知る朱鷺である。長い間、別種であると考えられたが、20世紀になると背黒トキは、繁殖になると1月頃より黒い分泌物を出し、それを羽にこすりつける動作を8月頃まで続けたため、おそらく繁殖期を過ぎると白色へと変化する。

 江戸時代は、仏教の影響で肉食が禁じられ鳥獣類が保護されていた、もちろん朱鷺や鶴はみだりに獲ることは禁じられていた。江戸の80パーセントを占めた大名屋敷や寺社の庭に多くの鳥が飛来して動物園のようであったと考えられる。朱引内の事であり、郊外の渋谷・世田谷・品川・大田区などは畑を踏み荒らす朱鷺の駆除を幕府に願ったという。

写本は薄い和紙に描かれているため、裏写りしている。
 朱鷺が絶滅し、アホウドリが減少したのは明治になり、近代化を急ぐ明治政府が外貨獲得のため羽毛を輸出したからである、そのため鳥は猛烈な勢いで狩られ羽を採られたのである。国立国会図書館デジタル化資料
 木版画 朱鷺
 
木版画 クロツルとキヌカツキ

右ページは陽鳥(クロツル・キヌカツキ)、左ページは琉球ツルである。国立国会図書館デジタル化資料

 
木版画 インコと七毛インコ

右ページは緋インコ、左は七毛インコである。江戸時代には鸚鵡とインコの区別はなく、全てインコである。