北斎の三女、葛飾応為が描く「三曲合奏図」、繊細な描写で注目を浴びる

「三曲合奏図」款記 應ゐ酔女筆「應」(白文方印)絹本 着色 一幅  46.7×67.4p 印章なし 紙本 ボストン美術館蔵

「三曲合奏図」………自由に描いて欲しいと注文された応為。
何を描こうか苦しんでいた応為は、娘達三人に別々の楽器を持たせ、合奏図を書くことを思いつく。それも江戸の固定化した身分制度な中では一緒に演奏することのない組み合わせ、花魁には琴を、芸者には三味線を、町娘には胡弓を演奏させるのである。

応為の独創は、合奏の音を見る人に感じさせる画にする事を目指したことである。今までの合奏画が、楽器の姿(形)を見せるため背景などの書き込みがあり、音が聞こえなかった、応為は音を聞かせたい。そこで大胆な構図を選んだ、余白を少なく人物を中心に三人が演奏する輪のように構成した。すると中心となる花魁が後ろ向きに成り、全体構成が破綻する。応為は花魁の衣装に着目する、やや横座りにして帯と蝶柄の着物を広げ、顔は見せずに演奏に集中させた。応為は手の仕草、顔の表情にも演奏の緊張感を持たせた。応為は親父北斎が認める技量を示した。


   この絵(軸装)は、明治24年(1892)に開催された「北斉とその流派展」目録にウイリアム・S・ビゲローのコレクションとして記録されている。また、アーネスト・フェネロサの解説には『その真剣な着想、最後の仕上げまで変わらぬ完璧な描法、またその鮮やかな彩色法からいって、本図が当展覧会中もっとも注目されるべき作品の一つであることは間違いない』と述べています。
「北斎娘・応為栄女伝」久保田一洋著 発行・(株)藝華書院 2015年

応為の技量は『随所にグラデーションを駆使した細部の描写や、琴を弾く女性の手や指の細かさ、指はその付け根から指先へと関節まで細長く書き込まれた、細部に応為の画風が見て取れる。』また『三味線を弾く女性の耳許には、二本のほつれ毛があり』これが応為の特徴とされている。
制作年代……『款記は弘化4年(1847)春刊『女重宝記』挿絵にも「かつしか 應ゐ酔女筆」と記されている。『女重宝記』挿絵と同署名であることから、本図の制作年代は、ひとまず弘化から嘉永年間に掛けた時期(1844〜1856)と推定しておきたい。』久保田一洋氏の指摘

   


今までの三曲合奏図の例「浮世美人見立三曲」渓齊英泉 三枚揃い 議会図書館所蔵
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