葛飾應為の得意な縦構図『蝶々二美人図』は何処に行ったのか。
同じ図柄の北斉・応為の「竹林の富士図」が三点ある。
 
 
『蝶々二美人図』款記 應る栄女筆 印分不明(白文楕円印)絹本 着色一幅 108.1×33.4p 所在不明

本図は金子孚水(ふすい・本名清次)の所蔵であるが、以後、所在不明となる。描かれている団扇が「朝顔美人図」の団扇と同じである。「柄、要、縁、骨、地紙の模様」もほとんど同じで、久保田一洋氏は「応為と辰女が同一人物である証左」であると言われる。また、扇子を持つ女性もほつれ毛があるのも応為の特徴である。それに『座る女性の帯部分には、花と一緒にデザインされた蜘蛛の巣模様があり、「三曲合奏図」の琴を奏でる女性の裏地にも同様の模様がある』、このことから、久保田一洋氏は、辰女と栄女は同一人物と考えている。
 
『竹林に富士図』 款記 應為栄女筆 
絹本 着色 一幅 104.0×32.6p 個人蔵
下は北斎の描く『竹林の富士図』

 
 『純粋な応為の作品』(久保田一洋)である。この作品には全く絵柄の同じ画が長野県須坂市の牧家に伝わる。同じ図柄の三点は久保田一洋氏によれば、応為の作品を写し取り、一つは北斉に、もう一つは応為の印を押したのでは無いかと推測されている。北斉の印章問題は複雑で、専門家でも意見が分かれている。