長崎出島の町名主高木家が残した『外国珍禽異鳥図』


江戸時代寛文年間(1661〜1672)に中国やオランダから持たされた鳥獣は、長崎の代官や町名主を務めた高木家の絵師により絵にされ、江戸に輸入の是非を訪ねるため送られた。高木家では控えを保存しており、この控えを明治になり軸装から図譜にまとめたのが、慶應義塾大学に保存されている『唐蘭船持渡鳥獣之図』(江戸中期ー江戸末 彩色・折帖5帖、長崎町年寄高木家・松永安左エ門旧蔵)です。国立国会図書館デジタル化資料の本はこの写しです。
『この図に描かれている動物は寛保〜嘉永年間(1741-1854)までの225図で、獣類之図、犬之図、馬之図、鳥之図の4 種類5帖からなります。江戸時代に多くの鳥獣が外国からもたらされていたことはわかっていましたが、種名と渡来年が明確な事例はほとんどありませんでした。本書は江戸時代の動物渡来史を大幅に書き直すもととなった博物史上、貴重な資料です。昭和32年(1957)に松永安左エ門氏により寄贈されました。』慶應義塾大学WEBより

元の名称は『唐蘭船持渡鳥獣之図』、折帖ニ帖(天地)、「獣類之図」「馬之図」「犬之図」各一帖の五帖からなる。保存状態も良く、色もあせていない。形態・色彩も正確である。

「類達からくん カンムリバト(冠鳩)」絵師不明、文中には天明7年(1787)出所アンボン島とある。冠鳩は『梅園禽譜』にも描かれているが梅園禽譜の絵のほうが、色彩は正しい。別称はコローンホウゴロデアル。国立国会図書館デジタル化資料



上は毛利梅園の冠鳥
木版画 カンムリハト 木版画 ヤマアラシ
ヤマアラシ(山嵐)『外国珍禽異鳥図』には、鳥以外の動物も描かれている。

「ポルポラアト鳥 ホロホロ鳥」絵師不明、キジ目ホロホロチョウ科、ヨーロッパ人がギリシャ・ローマ時代より家畜化したホロホロ鳥である。文政5年(1822)オランダより輸入された。左が雄、右は雌である。国立国会図書館デジタル化資料

人気のあった江戸の鳥、外国から来た鸚鵡(オウム)や鸚哥(インコ)達

「類達音呼 ヨウム(洋鵡)」絵師不明、『アフリカ中西部が原産の大型インコ。当時からヨーロッパでもよく飼育されていた。この鳥はかなり爪が伸びている』(「江戸時代描かれた鳥」細川博明著、ソフトバンククリエイティブ刊)捕獲地・ロイアール島 天保3年 国立国会図書館デジタル化資料

「鸚鵡 コバタン(小巴旦)」絵師不明、オウム目オウム科 バタンとはインドネシアを指す。国立国会図書館デジタル化資料
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