江戸幕府の幕医・栗本丹州が創った珍しい魚図譜『異魚図賛』

幕医栗本丹洲(1756−1834)の魚介譜を奥倉魚仙(辰行)が転写した異魚15品種の図譜。

『 最初から5番目の、象の鼻のような突起をもつ「サウサメ」(ゾウザメ)は、図が悪いがチョウザメか。その後にヒレがみな赤く細長い魚が6匹あるのはリュウグウノツカイ(龍宮の使)。リュウグウノツカイの間に描かれている、頭上に鞭のようなものが伸びている無名魚は珍魚アカナマダ。稿末から3番目の「ユトウ」は北海道やサハリンの川に生息するイトウで、時には体長2mにもなる日本最大の淡水魚である。このアカナマダとイトウの図は日本でもっとも古いと思われる。』(磯野直秀)国立国会図書館デジタルコレクションの解説
 (注−1)奥倉漁仙(辰行)は、江戸神田多町の八百屋、通称甲賀屋長右衛門。

国学者狩屋えき斉に画才を認められ、魚の絵を描く。『異魚図賛』栗本丹州編
木版画 チョウザメ
「サウサメ サウフカ(チョウザメ)」画・奥倉漁仙 転写、元本は栗本丹州である。安永8年(1779)9月2日   阿州(阿国)名東郡津田浦で捕獲された。全長210センチ。日本にもチョウザメがいたようで、詳しくは「日本のチョウザメ」HPを御覧ください。
  明治の頃までは、北海道の石狩川付近で獲れたが、現在は絶滅危惧種となっている。国立国会図書館デジタル化資料
木版画 アカナマダ

「アカナマダ(赤波馬駄)」画・奥倉漁仙 転写、元本は栗本丹州である。安永8年(1779)9月2日、体長は70センチからまれに2メートルを越える。五口の口を持つという深海魚である、台風の後に海岸に打ち上げられることがある。肛門から墨汁のような液を出す習性がある。
国立国会図書館デジタル化資料
 

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木版画 リュウグウノツカイ
「リュウグウノツカイ(竜宮の使い)」画・奥倉漁仙 転写、元本は栗本丹州である。アカマンボウ目リュウグウノツカイ2属2種。全長は3メートルから10メートルを越えることもある。銀色で美しくこの名が付けられた。深海魚であり、生態は不明である。
上 の魚は寛政12年(1800)出雲の国日御灘あたりで見つけられたようだ。右の絵もリュウグウノツカイである。上がオス、下がメスと記載がある。国立国会図書館デジタル化資料


「ユトウ(イトウ)伊東魚」画・奥倉漁仙 転写、
元本は栗本丹州であるサケ目サケ科、日本最大の淡水魚、体長12メートルほど、和名は糸魚。分布は北海道の一部河川と樺太・南千島に生息しているが、急激に減少している、保護プログラムが求められる。画中には、寛政4年(1792)に写取とある。国立博物館蔵
東京国立博物館蔵   図譜目次に戻る