アロイス・ツェトル(Aloys Zotl・1803ー1887年)のドードーである


『Dodo』1859.6.5 Aloys Zotl

本
『澁澤達彦 THEMUSEUM OF DRACONIA 夢の博物館』 澁澤達彦著 美術出版社刊 1988年 4200円

  

 
  細密描写のカラー水彩画。彼はオーストラリア人でアマチュアの画家だったらしい。本職は皮革染色業で誰に見せるのではなく、自分の楽しみで描いていたらしい。生涯で170枚の画を描き、全て動植物で細密画である。実物を見て描いたのではなく、本などの旅行記を参考に描いた物らしい。驚いたことに同じ動物は二度と描かなかった。だからドードーもこの絵だけである。おそらく当時の本を見て描いたのだろう。別の外国の文献によればリトグラフとなっている。澁澤氏によれば1956年の文献により絵を見ているので誤解かどうか、どちらが正しいか分からない。(参考『夢の博物誌』から)



〈アンドレ・ブルトンにより賞賛された孤高の画家、アロイス・ツェトル〉1859年


アロイス・ツェトル(Aloys Zotl・1803〜1887年)

 彼の画が初めて世に出たのは1955年の冬であった。画は水彩画で大きさは30×50センチほどで、ドイツ語かラテン語の注釈が付いていた。1956年の春にも競売に付され、有名なアンドレ・ブルトンが一文を寄せたのはこの時の目録である。アンドレ・ブルトンは彼の水彩画を「アンリー・ルソーと比較して壮麗な動物誌」と賞賛した。

  1831年から1887年の日付がある水彩画が300枚近くある。ほぼ一貫して題材は熱帯の動物である。熱帯の背景に描かれた動物は不思議な静謐をたたえている。何か写真や本の挿絵を参考にしたらしく、実際の熱帯を見たわけではない。しかし、彼独自の世界を創り上げている。彼の仕事は染色職人で、仕事の上での記録はないらしい。楽しみで描くアマチュア画家で作品を発表したり、画で有名になろうとはしなかったようである。

 本物を見ないで言うのも失礼だが、私には熱帯特有の暑さなど感じない、博物館のジオラマ風景のようだ。水彩画のせいかもしれない。ただ、細部への描きこみはこだわったようだ。好んで描いた題材は蛙や猿などであり、不思議なユーモアを感じさせと言う。(参考 『絵画のなかの動物たち』利倉隆著 美術出版社発行 2003年)

アロイス・ツェトルの本
 ネットで確認してみると彼の本がある。タイトル「Il bestiario di Aloys Zotl (1831-1887)」著者はMariotti Giovanni、イタリアの出版社Franco Maria Ricci、ISBNは「8821603164」である。定価は定かでないがネットオクションのイーベイでは225ドルで出ていた。興味のある人は探してみてほしい。2006.05.16

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