江戸庶民から大名・旗本にまで愛された金魚の世界

金魚の歴史 江戸人気抜群の金魚
 金魚は中国の長江流域にいる、銀色のフナが突然変異して赤くなったフナが生まれたのが最初と言われています。およそ1600年前の事です、中国で赤色は金運をもたらすと喜ばれ宮廷に献上されました。日本には室町時代にもたらされ、江戸時代には大名から庶民まで人気になった愛玩動物です。今のようにガラス金魚鉢が高価であったため、金魚は陶器の鉢に入れ上から見ることが一般的でした。これを「上見」といい、金魚の改良は上から見ることから始まりました。目が飛び出ると龍が連想され、「龍晴(りゅうせい)」と呼ばれて珍重されました。この最高峰が「頂天眼(ちょうてんがん)」です。上見のため背ビレをなくしたのが「ランチュウ」です。(参考・NHK「美の壺」)

守貞漫稿の金魚売り……『著者は喜田川守貞。起稿は1837年(天保8年)で、約30年間書き続けて全35巻(「前集」30巻、「後集」5巻)をなした。1600点にも及ぶ付図と詳細な解説によって、近世風俗史の基本文献とみなされている。』(ウィキペディア)、図は江戸と大坂の金魚売りである。守貞漫稿六巻のページ・拡大
奥村辰行の描く『水族四帖』の魚たち
写真 金魚
『博物館魚譜 金魚』絵・栗本丹州他 博物館魚譜とは明治に設立された帝室博物館に集められた江戸時代図譜を田中芳男が編纂したものである。東京国立博物館蔵 
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「金魚 ランチュウ他」絵・奥村辰行 
東京国立博物館蔵の『博物館魚譜』から 
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『琉球金魚 博物館魚譜』東京国立博物館蔵
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「水族四帖 春」画・奥倉辰行 版元・水生堂 この本は、春・夏・秋・冬の4冊あり193種が描かれている。上の画、赤い金魚とスモリ、アヲメ、中心はフナらしい。国立国会図書館所蔵 
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「水族四帖 春」画・奥倉辰行 版元・水生堂 右2点が金魚 国立国会図書館所蔵 

奥倉辰行(不明〜1859)について
  江戸神田の八百屋を営む、名は辰行、奥倉魚仙(号)とも称する、通称・甲賀屋長右衛門。国学者狩谷掖齋(えきさい)に画力を認められ魚の図譜を描く。『水族写真ー鯛部』『水族四帖』『魚仙水族写真』『異魚図纂・勢海百鱗』などである。ここで言う写真とは、実物や図譜を見ながら精密に描いたことを言う。また本には他の本からの転写も多く、栗本丹州などの転写もある、詳しいことは不明である。(参考・国立国会図書館 磯野直秀)

金魚の描かれた扇子    
長谷川雪旦(1778〜1843)は江戸後期の絵師である。 一般的には「江戸名所図絵」の挿絵画家として知られる。彼は狩野派や琳派、円山四条派など幅広く学び活躍した。おそらく40代頃であろうが、文政元年(1818)唐津藩小笠原長昌の御用絵師となったらしい、また尾張藩の御用絵師とも言われるが、彼と両藩の関係は不明である。長谷川雪旦の生まれは金沢、名は宗秀、通称は茂右衛門、長之助と名乗る。「江戸名所図絵」の成功によるためか文政12年(1831)に法橋、天保11年(1839)頃に法眼になったと伝わる。右の扇子は、狩野派御用絵師の仕事のひとつである大奥の贈答扇子制作と同じ仕事かもしれない、尾張藩の下賜扇子である。
(東京国立博物館所蔵)
歌川国貞 江戸豪商の家 瀬戸物の金魚鉢
「あつまけんしみたて五節句」絵・一寿斉国貞(歌川豊国三代)、安政2年(1855)版元・山庄 山田屋正次郎 彫師・彫竹 横川竹二郎(名人馬鹿竹)三枚揃い 国立国会図書館デジタル化資料 

江戸時代 豪商の財力を表す浮世絵である。団扇のページで紹介した手回し扇風機に、驚くべき大きさの金魚鉢である。上から見て観賞する「金魚の上見」を見事に描いている。なかの金魚も高価なものばかり、江戸後期の浮世絵である。
東京国立博物館
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