《晩年の北斉 渾身の読本挿絵『釈迦御一代記図会』》
木版画


『釈迦御一代記図会』山田意斉(1788ー1846)作 挿絵・葛飾北斎 弘化2年(1845)、江戸・京都・大阪で刊行された仏伝の読本、全6巻、55話、下に紹介する絵は、熱心な日蓮宗徒であった葛飾北斉が、従来の仏伝図とちがい、独自に作り上げた可能性が高く、場面構成や線画に異彩を放っている。

「悉達太子御誕生の図」
 蓮の花の上に誕生したお釈迦様である、龍神が雨を降らし、諸神が祝福をあげている。木版画でありながら非常に緻密でデザイン的である。現在のペン画ならわかるが、江戸時代の絵とは信じられない。北斉81才の仕事である。国立国会図書館デジタル化資料

「八面九足の霊鬼 悉達太子を試して四句の偈を授る図」→
 この図は、仏教の「背身聞偈」(せしんもんげ)であり、手前で身を横たえるのは、悉達太子である。国立国会図書館デジタル化資料

「佛威魔軍を懲を壱図」
 魔軍は光の下にいるが、北斉で感心するのは、一度全体の絵を描いて、後から光の部分を造ったようだ、光の部分を造り、隙間に魔軍を描こうとすると、画面のズレが出来てしまう。そのようなところはないようだ。拡大表示 国立国会図書館デジタル化資料

「如来三冥土を示す図」
 右は極楽、左は地獄である。極楽には天上よりあまねく光が注ぐが、地獄では、摩耶夫人に害をなした二人の老人が苦しんでいる。上のとぼけた鬼が、遊びのように瓶のようなものを吊している。画面構成が見事である。国立国会図書館デジタル化資料 


「佛勅によりて目蓮活地獄を堤姿を一人の図」
 悉達太子の裾をつかむ老人(亡者か)、後ろに控えている二匹の怪物は、馬とラクダの怪物のようだ、全体像も完璧に出来ている。北斉で感心するのは、墨一色の画面構成を判っていることである。悉達太子の衣を墨の濃い色にすることにより、画面左右の均衡をとって、なおかつ目を引きつける構成になっている。拡大表示 国立国会図書館デジタル化資料
生業がカメラマンだった頃、モノクロの画面構成と、カラーの画面構成は違うものであった。モノクロでは被写体が、モノクロになった時、どのくらいの濃さ(グレーの階調)になるか計算した。例えて言うと、紅葉の風景は完全にカラーの世界である。モノクロにしたら面白くない、よほど構成を考えないと絵にならない。(私見)

「暴悪を罰して天雷流離が王宮を焼 君臣を撃殺す図」  雷神が龍ではない不思議な動物に乗って迫り来る、動きがあり迫力ある画面である。拡大表示 国立国会図書館デジタル化資料

「仏舎利を護って百国の王 帰国する図」
 説明的な絵であるが、北斉は本物の象を見たことがないだろう、象が江戸にやって来たのは8代将軍吉宗のころであり、描かれた象しか見ていない、生気のない象になってしまった。


国立国会図書館デジタル化資料
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